『おかやま次世代自動車技術研究開発センター』オープニングセミナーに参加してきました!
平成23年6月2日(木),テクノポート岡山で,岡山県と(財)岡山県産業振興財団により今年度新たに設置された「おかやま次世代自動車技術研究開発センター」のオープニングセミナーが開催されました。セミナーに参加した中国地域産学官コラボレーションセンターより,内容を紹介いたします。
○開会挨拶・祝辞
当日は,プロジェクトの推進責任者である岡山県の石井知事の開会挨拶でスタートしました。石井知事からは,「ものづくり企業の技術力は岡山県の強みであり優位性でもある。各企業と関係機関がより一層連携し,新しい技術を開発していくんだ!という前向きな姿勢で,「チーム岡山」一丸となって頑張ろう!」という力強いお言葉がありました。
続いて,来賓の方々から,「自動車産業は中国地域の基幹産業であり,このような取り組みは大変心強い。地域経済の活性化のためにも,自動車クラスターが形成され,部品サプライヤーの集積が実現することを期待している。」(中国経済産業局 地域経済部 藤岡部長),「電気自動車を広く普及させるには,技術的な課題がまだまだ多い。それらの課題を解決できる新しい技術が一つでも多く生み出されることを期待している。」(三菱自動車工業(株)水島製作所 横井所長)との祝辞がありました。
また,電気自動車普及協議会の福武会長(ベネッセホールディングス会長)からは,ビデオレターにより,協議会の概要紹介と「電気自動車は単にモビリティとしてだけでなく,蓄電というエネルギー利用の面でも大きな可能性がある。確実に実を結ぶことを祈念している。」と期待を込めたメッセージが寄せられました。
(左から,藤岡部長,横井所長,福武会長))
○プロジェクトの概要紹介
セミナーでは,まず最初に,おかやま次世代自動車技術研究開発センターの吉田センター長から,プロジェクトの概要について紹介がありました。
2009年の三菱i-MiEVの登場,そして県内企業11社による2010年のSIM-Drive事業への参加が一つのきっかけとなって,岡山県から電気自動車時代に対応する新技術・新製品を創出することを目的に,「おかやま次世代自動車技術研究開発センター」は設置されました。
本センターは,主に,設計作業を行う「事務・設計室」と,試作車の組立・試験を行う「試作・試験室」で構成され,その略称は,「OVEC(オーベック)」(Okayama Vehicle Engineering Center for the next
EV)といいます。(OVECは,Original,Valuable,Effective,Creativeの略でもあり,また逆から読めば,Creative EV from Okayamaとなり,「EVの新しい時代を岡山から!」という思いが込められた,とても凝ったセンスのあるネーミングのようです。)
このOVECと岡山県産業振興財団技術支援部・岡山県産業振興課・岡山県工業技術センターが中心となり,参加企業16社(※)と共同でプロジェクトを推進し,アドバイザーである三菱自動車工業(株)・(株)SIM-Driveや大学等を含む産学官連携により,今後3年間で試作車の製作・評価を進めていく計画になっています。なお,研究開発のテーマには,@軽量化・低コスト化の推進,A快適性・安全性の向上,BEV対応車体の開発,CEV固有部品の開発が挙げられており,新技術・新素材・新工法・新製品を結集した試作EVを製作したいとのことでした。
※参加企業16社:(株)アステア,井原精機(株),内山工業(株),(株)共立精機,コアテック(株),新興工業(株),水菱プラスチック(株),セリオ(株),ゼノー・テック(株),タイメック(株),(株)戸田レーシング,ナカシマプロペラ(株),ヒルタ工業(株),丸五ゴム工業(株),三乗工業(株),(株)メイト
○記念講演『21世紀社会と電気自動車』
【講師】 (株)SIM-Drive 代表取締役社長 清水 浩 氏 (慶應義塾大学環境情報学部 教授)
講師の清水氏は,2009年に大学発ベンチャーの(株)SIM-Driveを設立し,新型電気自動車SIM-001の開発プロジェクトを進めておられますが,実はそのはるか以前から,「21世紀は太陽電池・電気自動車が主流となって大きく社会が変わる」という強い信念のもとでEVの開発に取り組んでこられ,この30年間で12台ものプロトタイプを開発されています。そして昨年,とうとう従来のガソリン車と比較しても遜色ないレベルの先行試作開発車「SIM-LEI」の完成にたどり着いたとのことです。
清水氏によると,自動車の価値は「加速感」・「乗り心地」・「広さ」で決まり,広く普及させるにはこの3要素を向上させる必要があるとのことです。開発した「SIM-LEI」は,車輪の中にモーターを内蔵する「インホイールモーター」と,床下にフレーム構造を設けて主要な部品を全て挿入する「コンポーネントビルトインフレーム」が最大の特徴であり,これによって,電気自動車ならではの「乗り心地」に加え,わずか4.8秒で0⇒100km/hに到達する「加速感」と,4人乗っても楽々&ゴルフバックも余裕で4つ入るという「広さ」を満足しているだけでなく,ギアの省略,空気抵抗の軽減,車体の軽量化などにより,1回の充電で航続距離333kmという非常に高い効率性も実現しています。
なお,現在(株)SIM-Driveでは,この「SIM-LEI」(1号車)に関する技術移転事業に加えて,2号車の開発を進めており,さらに来年度には3号車の開発を行う予定とのことでした。
約40分という比較的短い講演でしたが,全体を通して清水氏のEV開発に対する熱意が伝わってくるだけでなく,魅力的なEVを開発して広く普及させるためには,従来のガソリン車の延長で考えるのではなく,その概念を打ち破る新しい発想が必要であり,EVならではの特徴・メリットを活かした新技術の開発および適用方法の検討が極めて重要であることをあらためて認識することができ,非常に有意義な講演会でした。
また,セミナーの合間には,会場であるテクノポート岡山の正面玄関前で「SIM-LEI」の披露&試乗が行われ,多くの参加者の注目を集めていました。
実際に目にした「SIM-LEI」は,デザイン性と機能(空気抵抗の軽減,車体の軽量化など)を兼ね備え,雨上がりの青空に映える洗練された白いボディと,足元がすっきりした広い車内が大変印象的であり,試乗された方々にお聞きしてみても,皆さん口を揃えて,「加速が素晴らしい!」,「車内が広くて大変乗り心地がいい!」と絶賛されていました。
(株)SIM-Driveで進められている試作車の開発,そしてこのたび設置された「おかやま次世代自動車技術研究開発センター」を中心としたプロジェクトによって,さらに改良された魅力的な次世代EVが誕生することを期待したいと思います。
(中国経済連合会 桑原)