『イノベーション・ジャパン2011』&『第10回産学官連携推進会議』に参加してきました!
平成23年9月21日(水)〜22日(木),東京国際フォーラムにおいて,「イノベーション・ジャパン2011」と「第10回産学官連携推進会議」が同時開催されました。中国経済連合会からも本イベントに参加してきましたので,その内容を簡単にご紹介します。
○イノベーション・ジャパン2011
9月21日はイノベーション・ジャパン2011を見て回りました。この日は夕方に台風15号が関東地方に接近・上陸することが予想されていました(余談ですが,実際,夕方には大変な暴風雨となり,交通も大混乱となりました)が,早朝から多くの方が来場されていました。
開会後,まずNEDOプログラム・マネージャーの小川紘一氏の基調講演「アジアの成長と共に歩む日本型イノベーションシステム〜『技術』と『知』を国際競争力に結び付ける仕組みの構築に向けて〜」を聴講しました。この講演は,日本企業がエレクトロニクスの全製品領域で,圧倒的な技術と知財を持ちながらグローバル市場でシェアを失う(=研究開発投資が国際競争力に寄与していない)という状況に陥っている原因を分析するとともに,そこから抜け出すための日本企業の方向性を示すもので,大変興味深いものでした。
午後からは大学の最先端技術の展示コーナーを回りました。全体で300件を超える展示があり,多くの参加者が各展示について熱心に質問等をされていました。中国地域からは,鳥取大学1件,島根大学2件,岡山大学3件,岡山県立大学1件,岡山理科大学1件,広島大学2件,県立広島大学1件,広島市立大学1件,広島国際大学1件,呉工業高等専門学校1件,山口大学3件の出展がありました。その中では県立広島大学 三苫先生の「残留性有機汚染物質及び重金属汚染土壌の同時処理法」の展示が興味深く思いました。中国経済連合会が中国地域国立5大学連携によるバイオマス意見交換会の委員としてお世話になっている山口大学 田之上先生も「レーザーによる燃焼温度分布の高解像度非接触測定」というテーマで出展されており,田之上先生と教え子の方で分担して,多くの方の質問に忙しく対応されていました。
(左から,山口大学の田之上先生の展示,展示コーナー全体の様子)
その後は,「産学連携NOW!『産学連携のススメ』」と題して経済産業省主催のセミナーに参加しました。6テーマ行われたうちのひとつで「『技術』と『知』の融合が拓く未来」というテーマのものが最も参考になりました。複数プレーヤーの連携によるイノベーション創出に向けた連携における知財の役割として「インデックスとしての『知財』」ということが重要になるという指摘については大切な視点だと思いました。
○第10回産学官連携推進会議
9月22日は第10回産学官連携推進会議に参加しました。午前中のプログラムは,基調講演「第4期科学技術基本計画について」(内閣府特命担当大臣〔科学技術政策〕古川元久氏),特別講演「産学官連携による日本の再生」(東芝会長
西田厚聰氏),特別講演「『はやぶさ』が挑んだ人類初の往復の宇宙飛行,その7年間の歩み」(JAXA教授 川口淳一郎氏),特別報告「異分野融合によるマイクロシステム開発とコラボレーション」(東北大学教授
江刺正喜氏),特別報告「スーパーコンピューターによる医薬品の設計」(東京大学教授 児玉龍彦氏)の計5件の講演が行われました。
印象に残ったのは古川大臣の講演と西田東芝会長の講演でした。古川大臣の講演では科学技術とイノベーションの一体的な推進の必要性を強調されるとともに,ステークホルダーの幅広い知を結集して新たなイノベーションを生み出し,わが国の復興・再生につなげるべきと述べられました。西田氏の講演では,新しい価値を生み出すバリューイノベーションの創出が大切であるが,これは必然的に高いリスクを伴うことから企業単独で取り組むことは困難であり,ここに政府の支援という役割が大きく,産学官連携の使命もここにあるということを強調され,第4期科学技術基本計画に盛り込まれた5年間で25兆円の計画の継続的な完全実施を強く要望されました。
午後からは産学官連携功労者表彰に出席しました。全体で19件の表彰が行われましたが,今回は残念ながら中国地域の大学・企業の受賞はありませんでした。受賞事例については,いずれも大変高度な技術が実用化されて大いに社会に貢献しているとともに,そうした成果を生み出す過程で産学連携が大きな推進力となったことが印象的でした。今後はまた中国地域から受賞事例を生み出すことができるよう他のコラボレーションセンターの皆さんと力を合わせて私ども中経連も産学官連携活動の支援にしっかりと取り組んでいかなければならないと感じました。
最後のプログラムは,パネルディスカッション「グリーンイノベーション〜環境・エネルギー先進国を目指して〜」でした。5人のパネリストの中に中国地域国立5大学連携によるバイオマス意見交換会でお世話になっている鳥取環境大学の横山先生がおられ,バイオマスエネルギーの利用を推進していくためには根本の林業再生に向けて長期的な政策連携に取り組む必要があることを強調されていました。パネルディスカッションの最後にコーディネーターの東京大学特任教授
妹尾堅一郎氏は「まとめ」として,多様な再生エネルギーを組み合せて,どうアレンジするのかがポイントであり,局所・短期の最適ということと全体・長期の最適を区分して進めるべきと整理されました。また,コメンテーターの総合科学技術会議議員
相澤益男氏は「総評」として,何が重要課題なのかユーザー視点でもサプライヤー視点でもない,「私たち」の視点で持続可能な成長にどう転換していくのか考えることが重要であり,あらゆるところにある壁を打破することがイノベーションの根幹であることを強調されていました。最後に,第4期科学技術基本計画は社会と共に作り,進める政策であり,本日がその第一歩であると考えていると締めくくられました。
2日間にわたる今回の出張で,内容の濃い講演をいくつも聞かせていただくとともに,興味深い展示も多く見ることができ,大変有意義であったと感じました。皆さまも来年ご都合がつくようであれば是非ご参加されてみてはいかがかと思いました。
(中国経済連合会 小泉)