産学官連携イベントレポート

『第10回岡山大学ベンチャー研究会』に参加してきました!

 平成24525日(金),岡山大学(津島キャンパス)で,「第10回岡山大学ベンチャー研究会」(講演会)が開催されました。研究会に参加させていただいたコラボレーションセンターより,研究会の活動や講演内容についてご紹介いたします。

○岡山大学ベンチャー研究会の概要

 当日は,講演会に先立ち,学生代表の畑 峻輝さん(工学部・2年生)から,研究会の活動状況についてお話をお伺いすることができました。

 岡山大学ベンチャー研究会(OUVL)は,起業を目指す学生や実際に起業している社会人などが切磋琢磨する機会を提供することを目的に,2011年5月に設立。キャリア開発センターの杉山研究室が母体となり,杉山先生や(株)クレオフーガの西尾社長が中心となって運営されています。

 主な活動としては,毎月1回(最終金曜日の18:00〜19:30),東京や岡山で活躍されている起業家・ベンチャー経営者による講演会を開催しており,昨年度は50〜80名程度だった参加者が,今年度に入ってからは120名を超え,今回の講演会も大変な盛況でした。また,NPO法人スプリングウォーターが主催する日本最大級のビジネスプランコンテスト「TRIGGER 2011」にも参加し,全国6位タイという好成績を収められています。

 今年度は,講演会の開催・TRIGGERへの応募に継続的に取り組むとともに,他大学との連携によるビジネスプランコンテストや,上海での起業家・学生との交流合宿などを計画中とのことです。

 OUVLの具体的な活動をお聞きしたのは今回が初めてでしたが,想像していた以上に広範囲かつ精力的に活動されており,正直驚きました。岡山大学からは,昨年度の「第10回キャンパスベンチャーグランプリ(CVG)中国」にも大変多くの応募をいただきました。今年度も積極的なご応募をお待ちしております!

○講演会「顧客起点のイノベーション」
        〜ブランド構築のプロフェッショナルが語る〜

 今回の第10回研究会では,長年,多数の企業のブランド戦略と事業変革のコンサルティングを行ってこられた,(株)博報堂コンサルティング 代表取締役社長の首藤明敏氏による講演会が行われました。その内容について,以下に簡単にご紹介いたします。

<ブランド戦略とは何か>
 ブランドの語源はラテン語の「BURNED(自分の牛を区別するための焼印)」。他者と区別する「認知」から,「信頼」の証,そして「愛着」の源まで,ブランドには様々な階層・深みがある。
 企業は独自のブランド価値を約束し,一貫して守り続けることで顧客との間に「深い絆」が築かれる。その際,何を約束するかが重要で,ほんの少しだけ背伸びして,実際より少しだけよく見せるように約束するのがポイント。それが会社・事業を成長させる。

<時代の転換期をどう生き抜くか>
 縮小する国内市場に対応するには,多様化する家族形態,消費形態,階層化する生活意識(上/中/下流)など,顧客の変化を見極めて,生き残りの芽を見つけ出すことが重要である。

<「モノづくり」から「コト(サービス)おこし」へ>
 「モノづくり」の代表格である電機・ゲーム業界が苦戦する一方で,例えば建設機器のコマツは,ICTを活用した保守・車両・稼動管理や省エネ運転支援などのサービスを一体的に提供する「コトおこし」の戦略で業績を伸ばしている。
 3.11以降,日本企業のブランドイメージ(安全,品質,技術力,信頼)が低下しつつある一方で,気が利いている,ホスピタリティ(おもてなしの心)がある,心遣いを感じる,ユーザーを理解しているといった「コトイメージ」は健在。ここにニッポンブランド復活の鍵がある。「モノづくり」(技術起点)に「コトおこし」(顧客起点)を加えることによって顧客との深い絆が生まれ,事業は成長する。

<顧客起点のイノベーション>
 典型的な例は,Apple。ユーザーの利用体験(機能・デザインだけでなく,捨てられる箱・店まで全て)をゴールに置いた商品×サービス開発をしている。
 イノベーションの切り口としては,以下の4パターンが考えられる。
  @既存技術で満たせる新顧客ニーズを開発(機能を絞り込んで高機能競争を避ける)
    (例)デジタルメモ「ポメラ」:テキスト入力に特化した電子メモ帳,ライフネット生命など
  A顧客ニーズ視点から新技術開発を促進
    (例)ZOZOTOWN:検索性の向上・独自の採寸ルールの採用等,ユニクロのヒートテック,キリンフリーなど
  B昔からあるモノが新しい形で再登場
    (例)ABC Cooking Studio:立地・店舗デザイン・レイアウト等の刷新,オトナTSUTAYAなど
  C他分野で定評のある企業や新分野進出
    (例)タニタ食堂:体脂肪計から健康食へ進出,FUJIFILMの化粧品(アスタリフト)など
 イノベーションの起点は,まず自身の「できること(強み)」,「らしいこと(期待)」,「やりたいこと(意思)」をよく考えること。天才的な発想による全く新しい発明が必須ではなく,既存の要素の新しい組み合わせこそがアイデアとなる。そして,「生活発想×経営発想」,「感性的発想×論理的発想」,「未来志向×現実思考」という複眼(ハイブリッド)思考で物事を考えることが重要。
 企業でイノベーションが起きないのは,慣例から抜けられない,経営と現場の断絶,縦割りの壁などが原因。イノベーションを起こすには,「ばか者」(発想段階),「切れ者」(実行段階),「よそ者」(評価段階)の存在が必要。特に「ばか者」には,根拠のない自信を持つ,飽きっぽさを良しとする,組織の壁にとらわれない,辺境者に注目する目を持つ,おもしろいストーリーを創り語るような人物が求められる。

 次回の第11回研究会(講演会)は,6月29日(金)18:00から,(株)脇木工 専務取締役の脇容子氏をお招きし,「〜”mono natural”の脇木工より〜 自社ブランドの夢見て東京へ」と題して開催されるそうです。

(中国経済連合会 桑原)